新聞掲載記事

<不安抱える親”交流” メールで出会いの場提供>


(2006年11月21日、熊本日日新聞)

 

NICU(新生児集中治療室)に入院した子供の親が悩みや不安を相談し合える仲間との出会いの場を作りたい。
体重542gの男の子を出産した熊本市の母親が2年前に発足させた親の会「ガンバリッコ仲間」が、医療機関や行政とも連帯しながらその輪を広げている。

ガンバリッコ仲間を作ったのは林英美子さん。きっかけは長男の太陽ちゃん(2才)の出産だった。
「週数22週6日、542g。24時間の命と言われた太陽が1日1日を重ねる中で、疑問や不安が沢山あった。そんな時、頼りになったのは熊本市民病院のNICUで一緒だったお母さん達でした。」NICUに入院中の2004年12月、会はスタートした。

太陽ちゃんの様に1500g未満で産まれた極低出生体重児は県内で04年に130人。難しい病気や障害を伴うこともあり、同じ状況の親同士が出会う機会は少ない。
「希望するママを紹介する”出会い系”と思って下さい」と林さん。
入会時に子供の名前や性別、出生週数、体重などを登録。「出生週数が近い」「出生時の体重が近い」「病気や障害が同じ」などの希望に応じて、管理者が該当する会員のメールアドレスを紹介する。
「外出時に子供の年齢を聞かれ、『ちっちゃいわね』と言われるたびに落ち込んだ」と林さん。しばらく自宅に引きこもっていた経験から、会からの連絡などは全てメール。誰とも会いたくない、話したくない時も、メールなら邪魔にならないからだ。

会員は現在約50人。会員の要望を受け、月1会の「集い」も開く。会場は市民病院産婦人科外来か市北保険福祉センターで毎回十数組の親子が参加。小児科医や理学療法士らの講話を聞いたり、会員同士がおしゃべりしたりして約2時間を過ごす。

また、子供がNICUに入院する両親に読んでもらおうと「Nノート」を作成。会員1人1人が出産時の状況や心配なこと、嬉しかったことなどと共に「我が子の生命力を信じましょう」「沢山のママ仲間がいるから1人で抱え込まないで」など、両親に向けたメッセージもつづっている。

ガンバリッコ仲間の活動には、医師や保健師らも期待を寄せる。市民病院総合周産期母子医療センター新生児科の川瀬昭彦医師は「医療機関の説明より、先輩お母さんの言葉の方が説得力がある」市北保険福祉センターの保健師森山奈央子さんは「同じ立場のお母さんにしか分からないこともある。訪問を受け入れてもらえないお母さん達にガンバリッコ仲間を紹介して、私達はその活動を支援していきたい」と話す。

「子供達は本当にガンバリッコ。だけど、お母さんは絶対に頑張らないで欲しい」と林さん。「1人1人が自分のペースや気持ちを大切にしながら前を向いて歩いてほしい。ガンバリッコ仲間での出会いが、そのきっかけになれば」と話している。

<編集室から>
「ガンバリッコ仲間」を運営する林英美子さんは、とても前向きでパワフルな女性。「542gの太陽を出産後、3ヶ月は泣き続けた」と言う話も最初は信じられませんでしたが、太陽ちゃんのブログを見ると、たくましくなった理由が分かる様な気がしました。「Nノート」に1人のお母さんが「早産予防の知識を広めたい」と書いていました。極低出生体重児の出生率は伸びており、そういった活動の担い手としも「ガンバリッコ仲間」は活躍できそうです。(田川里美)熊本日々新聞より

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